上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』を読んだ

このゴールデンウイークに読み切ろうと思っていた本の3冊目。本を選ぶにあたって、「私でも名前を知っているくらい有名な方」と「現代の作家」を探すことにしていた。後者として上坂さんのこの本を買ってみた。

上坂さんの歌がたまたまTwitterで流れてきて面白いと感じた、なんかモラルの反対側から引っ張られるような共感があった。

この本に集められた歌は著者が短歌を始めてからの数年間にあった出来事や時代でまとめられていた。若さの中にある混乱や抑圧と解放や依存がギュッとギュッと圧縮されて出てくるフルーツジュースのようだった。美味しさの話ではなくて、搾る様とか、さわやかな甘さをイメージするがそうではなくなんか血の味がするとかなんかそんな感じだった。

未来のサイズでも書いた通り、短歌の右も左もわからない人間なのでこの方の心にごくごく近いエッセイのように読んだ。全体は上に書いたようにドロドロしたものを俯瞰して見つめてるような不思議な一人称感と、なんか早さが高い爽やかさみたいなものがあって心惹かれることが多かった。

ところどころわからないものがあったか。これは共感のセンサーがないのかも知れなくて、それはそれでよいのではとなった。

それにしても後半の恋愛のことと思われるパートすごいよかった。言葉にこんな角度ある?みたいな取り合わせがバンバン飛んできて濃密できらめいていて、切なくてもうわたしにはやってこないものだって思った。良かった。

短歌の本を読む時は時間の使い方が難しいなと思った。短歌が作られた時間の圧縮に対して、読んで咀嚼する時間が少なすぎると感じて、また読み直さないと。

タイトルの由来はあとがきでスッキリした。著者の言葉でなんか救われた感じはした。救われたい。